2007年 06月 04日
「風の影」のシーン 4 クワトロ・ガッツ |
ダニエルは、「風の影」の本についてもっと知りたくて、お父さんに連れられて、クワトロ・ガッツというレストランに行って、「珍奇な本に精通している」というバルセロという、裕福な、やはり古書店の経営者に会いに行きます。
このクワトロ・ガッツは、いまやどの観光案内所にも載っている有名レストランになってしまいましたが、一時はかなり寂れてしまったことがありました。
このレストランの創始者はPere Romeu。 彼は19世紀の終わり、パリの「黒猫」というキャバレーで働いていて、こんな雰囲気のレストランをバルセロナにも作りたいと思い、ラモン・カサス、サンティアゴ・ルシニョール(二人ともカタルニァを代表する画家)らとともに、1897年6月12日にMontsio通りにオープンしました。
建物はPuig i Cadafalchのかなりごてごてとしたデザインです。
開店当時は大変評判になり、1899年には、当時17歳だったピカソもここの常連になり、初めての個展を開いたり、レストランのメニューの表紙絵を描いたりしました。
ここには音楽家・作曲家のアルベニス、エンリケ・グラナドス、建築家のルイス・ミレ、画家のノネイ、オッピソなど、芸術家が集まる独特の雰囲気がありました。
経営者のぺぺ・ロメウは経営者としてはあまり向いていなかったようで、食事の値段をかなり抑え、払えない人がいれば気前よく、「また払えるときでいいよ」といった具合でしたから、1903年には経営困難で閉店せざるを得なくなってしまったのです。彼は1908年に結核で亡くなるまで、ずっと貧困にあえいでいました。
クワトロ・ガッツの弊店を嘆く芸術家は多かったのですが、市民戦争のせいもあり、再び日の目を見たのはやっと1970年代後半。 1989年からはジョセップ・フェレが経営に乗り出し、1991年に建物は修復され、現在に至っています。
レストランのあるMontsio通りは普段あまり人通りの無い静かな通り
最近こそ観光客が多く訪れるようになりましたが、以前はちょっと怖かったのですよ。
内部はいつも観光客で満員
ボケボケですいません。これもラモン・カサス
レジのおじさん。動いちゃった
今ではこのレストラン、予約なしではまず入れません。
これはラモン・カサスの「タンデム」
レストランに入ってすぐ左の壁に描かれています。このオリジナルはMNAC(カタルニァ美術館)にあります。これはテーブルの上に敷かれているもの。
ピカソの描いたメニューの表紙の絵
長々と歴史を書きましたが、ダニエルがお父さんと行ったときは、実はこのレストランは営業していなかったと言うわけです。
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by gyuopera
| 2007-06-04 21:54
| 風の影 Sombra de viento
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