今回の一時帰国は本当に気の重いものでした。
まず第一に、兄の奥さんが8月末に亡くなり、レストランを経営していた兄は、もう力が抜けて、お店を続けていく気力をすっかりなくしてしまったこと。
義姉が元気だったころ、一緒にオートバイに乗ってあちこち旅行した写真のアルバムを見せては目頭を押さえている兄を見ているのはとてもつらいことでした。
故郷の街は相変わらずさびしく、あまり活気のないところで、そのさらにひっそりした住宅街にある母の家は古い日本家屋で、1年近くも誰も住んでいなかったので、庭はジャングルと化し、木は伸び放題、家の中にはいたるところにネズミのフンが転がっていました。 炬燵はかびくさく、押し入れの中の母の布団には虫がわいている始末。
幸いお天気に恵まれたので、家じゅうの洗えるものはすべて洗濯し、布団類は日に当てて乾かしました。去年来たとき、家じゅうをかなり整頓して不要なものはできる限り片付けておいたので、掃除はかなり楽でしたが、冷蔵庫や戸棚の古い食品を全部捨てるのは、結構大変でした。
大変なのはなんといっても庭で、伸び放題の藤やイチョウ、モクレン、つつじやさつきなどを選定したり、道に張り出して通行の邪魔になるほどに伸びている生垣を切りそろえたりしました。
アレルギーの兄が嫌う「ブタクサ」を全部引っこ抜き、クモの巣を払い、伸びた草を刈って、何とか人が通れるくらいの道を作りました。
母のいる施設は、電車で2駅先の町にあり、バスも何も通っていない遠いところなので、タクシーを使うしか行く方法がありません。片道2500円で、帰りも来てもらうので、毎日交通費だけで5500円ずつかかるのです。
施設は明るく清潔で、とてもよくケアしてもらっている様子で安心しました。
一つ気になることは、開閉自由な戸なので、ものを盗られることがしばしばあること。
初めの日に持っていったGodivaのチョコレートの箱2つが、翌日には1箱になっていました。一緒に持っていったゴーフルの箱も消えていました。すぐ忘れてしまう母はあまり気にしていないようですが、上等なズボンをとても汚いひどいものに替えられていたことはかなり悔しそうに話していました。
日本は教育が行き届いている国だと思うのですが、こういうちょっとした盗難の話は本当によく聞きくのです。亡くなった父も、お風呂に行って何度となくお金を盗られ、義兄などは、服を全部誰かが着て行ってしまって、なにも着るものがなくて本当に困ったことがあったそうです。
日本に行ってとても困ることは、テレビのニュースで日本のニュースしかやらないこと。BSなどで世界のニュースをやっているそうですが、母の家では見ることができません。
一日中同じニュースをくりかえしくりかえし。いったい今世界はどうなっているのか、まるでつんぼになったようです。
少なくともヨーロッパでは、ニュースはまず世界のニュースから、それから国内のニュースとなっているのに、この違い。
兄曰く、
「そういうことは、俺たちにはあまり関係ないから」 (!!)
テレビはスペインにいてもほとんど見ないのですが、日本のテレビはショー番組ばっかりでどれも同じ感じで、私には本当にうんざりするものでした。
ラジオもクラッシックだけ流している局がないのですね。バルセロナだと3つの局がクラッシック専門です。そんなにクラッシックファンが多いとは思わないんですけれどね。
東京で、朝、どこかでゆっくりカフェオレを飲みたい、と思っても、そういう場所が本当に少ないのにも困りました。 どうして?バルセロナじゃいくらでもあるのに。
ホテルの近くをあちこち探してやっと見つけて入ると、
「いらっしゃいませ~」
と元気な掛け声。でも鼻にかけた妙な発音は(これをする女性がものすごく多い!)、私にはとても気味の悪いもの。機械的な話し方は、まるで感情なんかこもっていません。
せっかく見つけたカフェ、ゆっくりしたいと思っても、なんだか居心地が悪い。 どうしてだろう?
友人曰く、
「回転を速くするために、無言の圧力をかけてるのよ」
これにはうなずいてしまいました。
ゆっくりされたらお店では困るわけで、まぁ、習慣の違いもあるのでしょうね。
都会にいるととにかく、せかせかせかせか。 それにしても、普通の人の歩く姿勢の悪いこと!
服装もどうも今の流行はなじめません。
若い子たちは、スペインだったらおそらく売春婦くらいしかはいていないようなホットパンツ、ひょろひょろの足に長い黒い靴下。 ミュールは相変わらずお好きのようですが、あのけたたましい靴音に、足をかくんかくんと曲げて歩くさまは、美しいとは到底言えないと思います。
でも東京で会った友人はとても個性的でエレガントでした。もう60歳を過ぎていて、決して美人じゃないのに、雰囲気がとても素敵なんです。衣類、アクセサリー、靴とバランスが良く取れているのでしょう。おしゃれなんだな、と思います。それは、ブランドのものを持つことじゃないんですね。彼女もブランドのものを持っていたかもしれないけれど、ブランド名が出てくることはなくて、彼女がとても素敵に見えるのです。
全体のバランス、というのは家や町にも言えるんじゃないでしょうか。
日本はきっと、細部にこだわりすぎているんじゃないかな、と思うんです。
たとえば、きれいな花を育てて咲かせている家が多いし、道にもたくさんあります。でも、植えてある鉢はいずれもプラスチック! 幻滅。
道によく花を咲かせていますが、私はもっと木を植えてあったほうが素敵じゃないかと思うんです。
日本で買ったものは、数冊の本と 10枚のCD、それから、無印でラップのケース。
ラップのケースを日本で買う方はあまりいないんじゃないかな?
というのも、スペインのラップフィルムのケースについているぎざぎざの切り口はとても切れが悪くて、ラップを使うたびにイライラさせられるのです。この20何年まるで進歩無しです。日本からラップを買ってきて、そのケースを使ったりしていましたが、だんだんボロになる。そうしたら、無印でラップフィルムケースを見つけたので、小躍りして喜んだというわけです。
それからとても便利なものを見つけました。それは液体ばんそうこう。 傷口に塗るだけで血も止めてくれ、すぐに水仕事もできる、これはすごい!
また、ホテルの窓からの景色。
こんな眺めは、やっぱり日本だと思いますね。
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