2008年 09月 30日
チューリッヒ中央駅での「ラ・トラビアータ」 |
9月30日、ヨーロッパの時間の20時05分から、チューリッヒ中央駅でオペラ「ラ・トラビアータ」が上演され、その模様がスイステレビSchweizer Fernsehenで生中継されます。
関係記事はこちらで
こういう番組は、今までオペラのオの字も知らない、もしくはクラッシックのクの字も興味ない人をも、ひきつけ興味を持たせ、こういう世界があるのか・・・と思わせる画期的な計画のようです。
これは、チューリッヒオペラハウスでチェロを弾いている友人が教えてくれたこと。
「中央駅に、普段はマーケットをやったり、クリスマス市をやったりする、だだっぴろいコンコースのスペースがあります。
東西南北、開いているので風が吹き抜け、しかもこの数週間の寒さで弾けるくらいの温度になるかどうか?歌手にとってはこういう隙間風や天候はのどに最悪ですし・・・。一体どんなことになるのか想像もできなかったのですが、昨日今日の練習に行ってみて謎解きできました。
コンコースにオケ用の舞台が作ってあり、私たちはその上で弾きます。ほとんど一人にひとつずつのマイクが立ててあります。
でも私たちの後ろには通常のオペラのように舞台がありません。歌手たちや合唱はどこで歌い演技するのか??とおもいきや・・・駅の中にあるカフェやレストラン、バーなどで、彼らは歌ったり演技したりするのです。
でも何10メートルも離れたバーで歌う声とオケをどうやってあわせるのか??
私たちのところには、小さなラードスピーカーがいくつもセットしててあり、そこから歌声が聞こえてきます。指揮者はイヤホーンで、オケと歌手たちの全体を聞くことができるミキサーと、モニターテレビを脇においています。モニターテレビには、歌手たちが見えないどこかの場所でやっている演技が、カメラを通して写ります。歌手たちには、もう一人アシスタントの指揮者がそばいて、モニターで本当の指揮者の動きを見ながら棒を振って助けます。
私たちは声が聞こえれば、合わせて音を出せる訓練が日常できていますので、つまりオペラハウスででも、耳で歌手を聞きながら、あとは時々指揮者の動きを参考にしながら弾いているので、歌手を見ながら弾いているわけではありませんから、歌手たちが見えなくても、聞こえさえすれば違和感はないのです。
歌手たちは、とても小さいイヤホーンを耳に入れていて、それで、ほかの歌手の声やオケの音を全部聞いています。彼らもそれが聞こえていれば、問題なくあわせられるわけです。もちろん彼らも小さいマイクロフォンをつけています。
駅のコンコースというのは実にいろいろな人の通路ですし、時計が15分おきに鐘を鳴らすし、汽車や、外の救急車のサイレンや、市電のきしみも聞こえてきますし、それより何より、そこを通るひとたちの足音や、人の気配・・・というものはとても大きなざわめきになり、しかも屋根や床に響き、何倍にも騒音は膨らみます。
でも不思議なことに、私たちはそういう騒音の中でも弾き始めると、そして歌手の声が聞こえてくると、ぱっといつものオケピットで弾いているのと同じ集中と注意力にスイッチが入り、回りの入れ物が違うとか雰囲気が違うとか、きいたこともないような騒音が聞こえるなどに関係なく演奏できるのだ、ということに気がつきました。
いつもオペラハウスで弾いているときは、それで当たり前で、こんなにも違う環境でどうなるか?なんて考えたこともありませんでしたが、何もそういうことに関係なく、そのモードに入るのだ・・・と改めて思いました。
いつもは舞台の上に、セットを組んでそこで歌手たちは演技をするのですが、今度の企画では、椿姫が駅の中のいろいろな場所を背景に、その中で生きている・・という感じになります。面白い企画だと思います。最後、ビオレッタが死ぬ前には、本物の救急車が入ってきて、ストレッチャーの上で彼女はなくなる・・という設定です。オペラハウスでやる演出ではなく、テレビ用に演出に手を加えていますが、反面テレビだからこそできる演出と効果でもあり、舞台ではとてもできないやり方です。知人があすの夜、テレビをビデオにとって見せてくれるはずです。視聴率は結構上がるのではないか・・・と思います。」
わくわくするようなお話です。我が家では見られないかもしれませんが、アンテナを持っていらっしゃる方、ぜひご覧になってください。
配役は ヴィオレッタに Eva Mei、 アルフレッド役がVittorio Grigolo、 お父さんのジェルモン役はAngelo Vecciaです。
写真はすべてSFのホームページからお借りしています。
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by gyuopera
| 2008-09-30 18:50
| オペラ、コンサート musica
|
Comments(6)
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gionbayashi at 2008-10-01 22:03
こういう手法があるのですね。 いつかこのDVDが出たら買いましょう。 ウィーンのニューイヤーコンサートとバレエの会場とをどうシンクロナイズさせているのかと考えていたのですが・・・ なるほど。
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gyuopera at 2008-10-02 02:26
♪ bionbayashiさん、こんばんは。私もこのDVDが出たら、ぜひ買いたいと思います。
もう寒いチューリッヒは、オーケストラの人たちおかなり寒くて大変だったようで、電気座布団が配布されたそうです。
チューリッヒオペラのDVDはいろいろ発売されていますが、ドン・パスクァーレは絶対お勧めです。演出もとても楽しいし、歌手もよかったです。
もう寒いチューリッヒは、オーケストラの人たちおかなり寒くて大変だったようで、電気座布団が配布されたそうです。
チューリッヒオペラのDVDはいろいろ発売されていますが、ドン・パスクァーレは絶対お勧めです。演出もとても楽しいし、歌手もよかったです。
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ぐらっぱ亭( ̄ー ̄)
at 2008-10-02 09:16
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久しぶりに帰国されて、素敵なところへいらしてハッピーこの上ないことでしょう。こうして見ると我が国もなかなかしっとりきれいですねー。写真がお上手ということもありますが。駅コンコースでのオペラという斬新な試行は極めて興味深いものがあります。10年ほど前に、やはりトラヴィアータをフランスで、パリやヴェルサイユのプチトリアノン(だと思いましたが)を舞台に同時生中継という試みがありました。どうやって作るのかと思いましたが、gyuさんの説明で納得がいきました。Eva Mei、今秋来日して、Antonino Siragusaとドゥオリサイタルをやります。聞きに行くつもりで、今から楽しみにしています。
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Seedsbook
at 2008-10-02 14:45
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面白い企画ですね。Gyuさんはオペラ座のオーケストラの一員なのですか? 日本から帰って間もなく仕事でなかなか大変でしょうが、かえって早くリズムを取り戻せてよいのかもしれませんね。
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gyu
at 2008-10-02 14:47
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♪ ぐらっぱ亭さん、おはようございます。今回は一年ぶりの帰国でした。
姉に、1,2泊でちょっとした旅行をしたいと頼んだら、日光に連れて行ってくれて、うれしかったです。
日光と言ったら、キンキラキンの、いつも人でいっぱいの観光地、というイメージだったのですが、途中の山々の美しさ、水の清らかさ、など、風景も存分に楽しめました。
このチューリッヒオペラのトラビアータの説明は、友人の書いてくれたものをそっくり使わせていただきました。
Eva Meiは、私もチューリッヒでこのトラビアータのステージを見ていて、とてもよかったので(演出はともかく)、DVDが出たら買いたいと思います。
姉に、1,2泊でちょっとした旅行をしたいと頼んだら、日光に連れて行ってくれて、うれしかったです。
日光と言ったら、キンキラキンの、いつも人でいっぱいの観光地、というイメージだったのですが、途中の山々の美しさ、水の清らかさ、など、風景も存分に楽しめました。
このチューリッヒオペラのトラビアータの説明は、友人の書いてくれたものをそっくり使わせていただきました。
Eva Meiは、私もチューリッヒでこのトラビアータのステージを見ていて、とてもよかったので(演出はともかく)、DVDが出たら買いたいと思います。
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gyu
at 2008-10-02 14:53
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♪ seedsbookさん、おはようございます。展覧会ご苦労様です。
私の友人が、チューリッヒオペラのオケでもう25年くらいチェロを弾いています。今回のオペラのことを詳しく書いてくれたので、許可を得て、そっくり載せさせていただきました。
私はアマチュアオーケストラに入っています。また、別のクワルテットもやっていて、こちらは今度の日曜日にコンサートがあり、今リハーサルで忙しいです。
私の友人が、チューリッヒオペラのオケでもう25年くらいチェロを弾いています。今回のオペラのことを詳しく書いてくれたので、許可を得て、そっくり載せさせていただきました。
私はアマチュアオーケストラに入っています。また、別のクワルテットもやっていて、こちらは今度の日曜日にコンサートがあり、今リハーサルで忙しいです。