風の影のシーンを追って 2  Arco del Teatro


本の冒頭の章「忘れられた本の墓場」、物語はここから始まります。
時は1945年、ナレーターのダニエルは当時10歳の少年。

”父につれられて、はじめて「忘れられた本の墓場」を訪問したあの夜明けのことを、僕はいまでもよく覚えている。”

書き出しはこうでしたね。朝の5時ころ、悪夢にうなされ飛び起きた少年ダニエルを、お父さんはしっかり抱きしめると、

「闇の中でしか、見えないものもあるんだよ」

と不思議な微笑をたたえて、朝もやの漂う薄暗い町を、そのミステリアスな場所に連れて行ってくれた、それが「忘れられた本の墓場」。

”僕たちはアルコ・デル・テアトロ通りの入り口につき、ラバル地区に足を踏み入れた。”

ラバル地区------ 10年位前まではチノ地区と呼ばれ、バルセロナでも危険地区ナンバーファイブの一つでした。ごく最近まで、昼間でも一人で通るにはかなりの度胸が必要な場所でした。
当然不動産も安かったので、今は新しいアパートホテルが次々と建ち、しゃれたバールやレストランができ、MACBA(バルセロナ現代美術館)ができたおかげで、すっかり様子が変わってきました。

それでも、このアルコ・デル・テアトロ通りは、お一人で歩くことはお勧めしません。

ランブラス通りに面した入り口は、別世界に入り込む穴のようです。
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明るい昼間でも、内部は暗く、ほとんど先が見えないほど。

中に入ると、すぐ入り口に小さなスタンドバーがあります。
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上を見上げると、そそり立つ古い建物
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「道というよりも、傷跡みたいな細い通り」
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「ランブラス通りのきらめきは、いつのまにか、ぼくらの背後で消えてしまった。」
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通りを整備したので、きれいになりましたが、以前は足元にかなり気を使わないといけない、とても汚い通りでした。ピソが並んでいても、めったに通人もいません。
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この通りをまっすぐ行くと、EOI, オフィシャル語学学校があります。私も都合8年くらい通いました。でもこの通りを通ることはめったにありませんでした。
一度、ドイツ語のクラスメートの男性についていってもらって通ったほどです。

この通りには、彫刻のある門扉のついた「棄てられた宮殿の亡き骸」も「「残響と影の美術館」らしき建物もありません。そういった建物は、バルセロナの旧市街にごまんとあるのですが、ここにはありません。

横の道に入ると、アーチを描いた建物。駐車場です。
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その近くにある門扉
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この扉のドアノッカーは、忘れられた本の墓場の管理人イサックを思わせる、小悪魔の彫刻のついたドアノッカーではありません。


私はまさにそれと思われるドアノッカーを、Sant Felip Neri広場に通じる細い道で見つけました。もっとも、この建物は「宮殿の亡き骸」ではなく、普通のピソなのですが。
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この悪魔
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「ドアノッカーの小悪魔と、ほとんど瓜二つに見えた」 という管理人のイサック・モンフェルトを彷彿させませんか?
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この門の上のバルコニーから、こんなものが覗いていたんですよ。
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旧市街には宮殿がたくさんあります。ピカソ美術館やテキスタイル美術館など、ミュージアムになったものも数多くあります。 

ほとんどの宮殿(palacio)と呼ばれる建物は、門を入るとパティオがあって、石の階段が上に続き、正面玄関は階段の上にあります。
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これはMontcada通りのある建物。


門扉は立派な彫刻のノッカーがついています。内部は、ミステリアスです。
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次回は、ダニエルの住んでいたピソ及びそのお店のあたりを歩いて見ましょう。

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Commented by ☆SAKURA at 2007-05-31 20:36 x
少し遡って読ませて頂きました♪
住んでいる方ならではの諸々の様子・とても興味深いです。
迷路のような細い小道・フリータイムの時ピカソ美術館に行く時にも歩いたような・・・

Commented by gyuopera at 2007-05-31 20:59
♪ SAKURAさん、こんにちは。
このあたりは今でも危険地区で、一人でここに入るのにはちょっと勇気が要りました。ましてやカメラを出すなんて、観光客と思われますもの。さささっと通って、手早くシャッターを切ってでてきました。今でもやっぱり、ここに行くのはいやですね。暗く、悪臭ぷんぷんの通りです。
ピカソ美術館の通りも、今では観光客ぞろぞろですが、10年位前まではとても物騒だったんですよ。いい時代になったというか・・・
Commented by アズール at 2007-06-01 09:30 x
はじめまして。
1年くらい前からお気に入りで時々拝見させてもらってます。
びっくりしました。
こんなに古いものを大切にしているバルセロナの町でも
東京の落書き(今や東京や大阪でかなり問題になってます)と
同じような落書きがあるなんて・・・ちょっとショックでした。
Commented by gyu at 2007-06-01 13:51 x
♪ アズールさん、コメントをどうもありがとうございました。
落書きはいまや世界的な傾向なんですね。日本など無いほうではないでしょうか。こちらは本当に多いですね。何かをマニフェストしているのか、カッコいいと思うのか、単なるいたずらかわかりませんが、町を汚らしく見せるのに甚だしく効果がありますね。ヨーロッパではどこでも見られると思います。こういうのを消すのもお金がかかるんですよね。
木の扉などは、塗料がはげてしまうので、消すのは大変なのだと思います。美観を崩す上に、落書き消す費用だって、市民の税金から出ているのですからね。
Commented by hanaitoh at 2007-06-01 14:00
「風の影」は、まだ読んだことがないのですが、文庫本もあるとのこと
ミステリー調は好きな内容ですから、早く手に入れて、
gyuさんのページと一緒に楽しみたいと思います。

全く知らない所を想像して読むより、gyuさんの写真つきの解説があったらより分かりやすく 楽しめそうですね。ワクワクドキドキです。
Commented by gyuopera at 2007-06-01 18:00
♪ hanaitohさん、ストーリーを全部言ってしまったら、読むほうもつまらなくなりますから、ホンノリとにおわす程度にしておきますね。でも、こんな場所なんだ、と少しは想像できたほうが、いっそう面白いかな?と思ったわけです。
私も読んだのは最近です。スペインって、新聞を見ていても、日本のように本や雑誌の広告が出ないんですね。だからどうやって見つけるのかな?ここはよく古本市がありますから、そういうところで面白そうなのを探して読む人も多いようです。だからベストセラーってなりにくいんじゃないでしょうか。日本のように、マスコミにそんなに左右されないようですからね。
Commented by 蓮華草 at 2007-06-02 00:35 x
gyuさん物語のホンのさわりと言うか、抜粋、読んでいるだけで、ゾクゾクしますね、期待で。
アルコ・デル・テアトロ通りも興味深く見せていただきました。

「道というよりも、傷跡みたいな細い通り」なんて素敵な表現!!

本を前にする日が、待ち遠しい気持ちです。

gyuさんの記事を、きっと、その時も読み返すことでしょう!!


Commented by AoimikanM at 2007-06-03 14:18
gyuoさんの記事を拝見しながら再読しようと思っています。
長い歴史の中でかなり環境的にも犯罪率も変化した全ての地域に感心があります。
悪戯書きはどの国にもあるのですね。悲しいけれどこれが現実なのだと思うと gyuoさんからのレポートがとてもリアルで
美しい場所ばかりを切り取ったガイドブックよりずっと楽しいですね。

*ねね
Commented by じゅん at 2007-06-03 14:42 x
gyuさん、こんにちは。
わたくしがバルセロナを訪問したときのことを思い出しました。
今回gyuさんが紹介されているところほどではないのですが、
ランブラス通りをず~っと海の方まで歩いていったところ急に
空気が変わったような気がして怖くなったことがありました。
急いで引き返した記憶があります。
昨今、日本でも平気で殺人事件が起こるようになりましたが、
まだまだ諸外国に比べれば治安は良いわけで、慣れない所
には近づかない方が良いな~と実感したものです。
Commented by gyuopera at 2007-06-04 06:13
♪ 蓮華草さん、この本を読んでいると、引用したくなるような文章がたくさんでてきて、ときどきドキッとします。
アルコ・デル・テアトロ通りは、上を見ると、建物が覆いかぶさるようになっていて、細く薄暗く、ちょっといやなにおいが鼻を突く、不気味ともいえるような通りです。そこにこんな現実離れした建物があると思いついた作者、さすが、と思います。ここは、ほとんどのバルセロナっ子も通りたがらないところですからね。
だんだんにいろいろなところをご紹介してゆきますね。
Commented by gyuopera at 2007-06-04 06:18
♪ ねねさん、いつもコメントありがとうございます。アップをしなおししなかったんですが、写真が見れるようですね。よかった。
2日ばかりピレネーに行っていたので、またアップが遅れてしまいました。
このシリーズでは、バルセロナのもう一つの顔、く汚いようなところをたくさん紹介することになりそうですが、そういった歴史が染み付いている町なわけで、時代とともに、いろいろ変化してゆくわけです。
今回新しく撮ったものと、今まで撮った写真を全部見てみて、適当と思われる物を選んでアップしてゆきたいと思います。
Commented by gyuopera at 2007-06-04 06:21
♪ じゅんさん、ランブラスの下のほうは、今でもやっぱり夜遅くは怖いところです。特にラバル地区は入らないほうが無難ですね。昔に比べてだいぶ安全になったとはいえ、やっぱり犯罪の多発する地区です。
最近私は、昔怖くて行けなかったようなところも時間帯を選んでどんどん歩いています。危険地区のほうが、昔のままの姿をよくとどめているんですね。だからかなり面白いですよ。以前だったら、汚い、と思ったものも、今では味がある、なんて思うようになったんです。歩くたびに何か発見があります。
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by gyuopera | 2007-05-31 18:22 | 風の影 Sombra de viento | Comments(12)

私と一緒にバルセロナを散歩しましょう Vamos a pasear conmigo en Barcelona!


by gyuopera