オルフェオ、船倉でのオペラ体験

2月24日はとても面白いオペラを体験しました。
今回の写真はいずれもHPからです。

見に行きました、というのとちょっと違うのは、オペラをやったところが、Naumonという船の船倉。

Naumonは1964年に作られたノルウェーの砕氷船で、廃棄処分になるところをグループFora de Bausが引き取り、動くカルチャーセンターとして2001年から活躍しています。
サーカスやダンス、講演会、などさまざまなイベントがあり、オペラは3回目。

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バルセロナ港のIMAXという映画館のすぐ裏に停泊しているNaumon号,そんなに大きな船ではありません。 こんなところでオペラができるのかしら?って心配になってしまいます。すでに長い列ができています。

まず、インターネットで予約した切符を受け取るだけでたっぷり30分並びました。予定の500枚の切符が売り切れると、船は扉を閉めてしまいました。

「おいおい、このまま出航して行っちゃうんじゃないの?」
「500人の馬鹿を見るのが今回の最大のショーかも」

それでも30分遅れて、入場が始まりました。
桟橋をわたると、水面下2mの船倉に下ります。照明はろうそくと、いくつかのライトがついていますが、紙で覆って光を和らげていて、下は足元も見えないほど暗いのです。

船倉は長さ約60m、幅12m、高さは7m、真ん中に1mくらいの高さの長い台があり、そのほかは何もありません。 どうやってオペラを上演???
一番奥に一応オーケストラボックス。

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椅子などありませんから、500人の観客たちはもちろん好き勝手なところに立っているのです。今日のモンテヴェルディのバロックオペラ「オルフェオ」が作曲された400年前は、劇場以外で上演されるときは、こうしてみんな立って観劇したのだそうです。

オーケストラが演奏を始めます。ほぼぎっしり観客が立ち並ぶ中、突然私のすぐ前から、青いドレスを着た女性がクレーンで吊り上げられて空中に浮かぶと、歌い始めました。

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(すいません、こんな画像しか見つかりませんでした)
吊り上げられながら歌うのは大変でしょうね。彼女はくるくる回ったり体を上下に振ったりして歌っていました。歌手も大変ですねぇ。 きれいなソプラノです。

さて、第一幕は(って、場面が変わるわけではないのですが)オルフェオとエウリディーチェの結婚式。羊飼いたちの楽しい歌が続きます。コーラスの人たちは、はじめオーケストラの上で歌っていましたが、ろうそくを持って下に下りてくると、観客の間を通り抜けてオルフェオたちのほうに行きます。オルフェオも観客を含む周りの人たちにワインを振舞いながら、ギタリストと肩を組んでオーケストラボックスまで行ったり。観客の中を歌手やコーラスの人たちがうごきまわるので、観客はそのたび戸惑いながらも動きながら見ると言うわけ。

突然曲が暗くなり、黒衣の先ほどのソプラノが、エウリディーチェが毒蛇にかまれて死んでしまったことを告げます。エウリディーチェの棺が観客の中をぐるりと一巡り。

オルフェオは黄泉の国にエウリディーチェを探しに降りてゆきます。
船倉の横の小さな丸窓から、裸の人が2人入っていって、ガラス張りの窓の向こうの狭い所に入り込み、水の中でうごめいているのは、死者の国をあらわしているらしい。

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暖かいと言ったって2月です。水の中での演技は寒いことでしょう。
出るときもまたその丸い穴から出てはしごを上ってゆきましたが、あの人たち何か着ていたかな?

オルフェオは、三途の川の船頭に、悲しみを切々と訴え、船頭は感動してオルフェオが黄泉の国に行くのを許してあげるのです。

さて、黄泉の国では、全身に泥をぬった死人たちが、たいまつを持って、時々ぼお~っと火を吐きながら観客の中を歩き回ります。すごい火で、熱気がこちらまでわ~っと来ます。みんなは慌てふためいてどどっと周りを開けます。ガソリンくさいにおいと煙が上がります。

「信じられん」

と叫んだ人がいました。

黄泉の国の王は、大きな水の入ったコップのようなものにどっぷり漬かって、人々に担がれて観衆の中をめぐりますが、彼もそんな格好で歌わなければならないのですから大変です。

黄泉の国の王様から、黄泉の国を出る最後まで後ろを振り返らないと約束して、エウリディーチェと歩き始めたオルフェオ、彼女の気配がないので、とうとう最後に振り返ってしまいます。
エウリディーチェは黄泉の国に連れ戻され、悲嘆にくれるオルフェオ。

上からアポロ(太陽の神、先ほどの黄泉の国の王を歌った歌手です)が、天井から、大きなボールのようなろうそくに火をともしたものを抱いて(太陽をあらわしているようです)降りてきて、オルフェオと一緒に天に上がって星になれ、というと、オルフェオと一緒にまた上がってゆきます。
すぐ近くでしたから、アポロンの胸についていた大きなクレーンの鍵をひとつはずして、オルフェオにつけるのがよく見えました。
みんなクレーンで宙吊りで歌ったわけですね。

歌手は3人で、同じ歌手が何役もこなしていました。特にバスはいい声でしたね。

それにしても、こんな空間でなんて生々しい演出。
この演出を手がけたCarlus Padrissaという人は、最近パリ・ガルニエ座でオペラを演出したこともある人だそうです。

とても面白いオペラ体験でした。

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Commented by bcnkahosumi at 2007-02-26 20:19
すごいですね!!! これもオペラなんですね!!! 教養が乏しくオペラはよくわからないのですが、その世界に引き込まれるというか・・??? 気づくとそのおはなしの中に自分もいる!!!というように思えますゥ!!! 
こんな船がIMAXの横に停泊してるんですね!!! すごいです!
私の知らない世界???(笑)を知った思いです!!!
でも・・・お客さんは立ったままで疲れませんか? 短い演目なんですか??
Commented by gyuopera at 2007-02-26 20:40
♪かほすみさん、面白いでしょう、オペラもこういう風に見せるやりかたもあるという提案というか・・・面白い経験でした。
オペラはまずストーリーを知っていないとね。特にコンなのは、何やってるのかぜんぜんわからないだろうから・・・。
立ったままの観劇ですが、歌手や俳優たちが観客の間を動き回るから、結構私たちも少しずつ動いていたりして・・・1時間半くらいでしたから、ぜんぜん疲れは感じませんでした。
終わってすぐ帰る人はいませんでしたよ。長い拍手がありました。皆さん抵抗なく受け入れたのでしょうね。これをリセウでやったらブーイング必至と思うんですが。
Commented by alex at 2007-02-26 21:09 x
こんにちは。
 宙づりになって歌う!? そんなことできるなんて、生半可な歌手では難しいでしょうね! 天に昇っていくのが、本当にクレーンでつり上げるなんて!! もうこのオペラの演出は、ビックリマークの三つ星という感じです。黄泉の国は確かにそんなイメージです。意表をついた演出でありつつ、観客と一体化している感じですね。斬新だけどなんだか納得できそうな…すごいです。
Commented by gyuopera at 2007-02-26 21:29
♪alexさん、普通の劇場でも、クレーンを使って歌手を中に浮かせて歌う場面があります。たとえばワーグナーのラインゴールドのラインの乙女が歌うシーン、グノーのファウストの、老人ファウストが若くなって悪魔と飛び立つシーン、などなど。ここでは船の中ですからクレーンはもとから付いていたんでしょうね。それにしても歌うのはすごく大変でしょうね。
私は見えなかったけれど、エウリディーチェの入っていた棺桶には、ミミズが一杯入っていたんですって!
背の低い私は、遠くのシーンはぜんぜん見えませんでしたから、それはちょっと残念。
Commented by AoimikanM at 2007-02-26 21:45
gyuoperaさん、こんばんわ〜。見応えのあるオペラですね! 最近はこういう前衛アートのような舞台が多くなって来ましたが、観た事があるのはどこも劇場です。
船の中でなんてワクワクします。そしてこういう演出が出来る人や出演者もきっと楽しいプロジェクトとして取り組んだ事でしょうね。私は舞台衣装を勉強中なので、舞台の楽しみは演出その物です。

*ねね

Commented by darklady at 2007-02-26 21:54 x
オルフェの話は映画「黒いオルフェ」が印象的で 高校生の時に見ました。 その後も神話を読んだりとてもロマンチックなのに悲劇を秘めていると思っています。
船の中で クレーンを使ったり 黄泉の国の水中シーンとか 観客は皆立ってみているなど とても不思議な観劇ですね。
どなたかのBlogにネアンデルタール人の墓とムスカリの花の話がありましたが 黄泉の国の恋人たち オルフェとエウリディチェを思い出していました。 こちらでもあのロマンティックなお話が話題になっていてうれしくなります。でもミミズの棺桶はかわいそうですね。
日本人にはちょっと発想しがたい気がします。
Commented by gyuopera at 2007-02-26 22:41
♪*ねねさんは舞台衣装を勉強なさっていらっしゃるんですね!舞台衣装デザイナーというと、すぐわだえみさんのことが頭に浮かびます。とってもクリエイティヴで、たくさんの専門知識の必要なお仕事でしょうね。
最近のオペラは演出のほうが主と言った感じがありますが、オペラはやっぱり音楽と演出がぴったり合っていないと・・・というか、やっぱり対等だと思います。
演出があまりに出すぎて音楽を邪魔してしまうのはあまり好きではありません。最近は話題をさらうためにやたらに過激演出する演出家がいて(Bieitoとか)、こういうのは見てていい気持ちがしません。
今回のは場所が場所だけに、過激演出(?)でも納得できてしまう雰囲気でした。
演出のおかげで、救われたオペラもたくさんありますね。
Commented by gyuopera at 2007-02-26 22:53
♪darkladyさん、リセウで上演したOrfeoは、それは美しいオペラでした。同じオペラでも、船倉でのこの上演は、なんという生々しさ!でもすごく生きているオペラ、という感じがしましたね。全く別のオペラ体験。
オペラは高尚で美しくなくては・・・と言うイメージと正反対でした。
ヨーロッパでは、古代ローマの劇場や競技場跡でオペラの上演をやりますね。オランジュに行きましたが、あれも面白いオペラ体験でした。オペラって一大娯楽のひとつだなぁ・・・と思ったものです。
Commented by aoi_color at 2007-02-27 05:01
読んでいるだけでも興奮してしまいました。
日本だと消防法で船の中で何て絶対無理でしょうね。
日本ではアングラ演劇で近い感じはありましたが、ここまでの演出は国内ではどうなんでしょう?
日本円だと観劇料どれくらいになるんですか?
Commented by gyuopera at 2007-02-27 06:08
♪aoi colorさん、コメントありがとうございます。
この間のcorrefocという火の粉を撒き散らすお祭りでは、しっかり消防自動車と、限りない数の消火器を携帯していましたが、今回は消防車は来ていませんでした。実際あんなふうに火を出すんですから、危ないですね。そこのところは誰も指摘しなかったですね。
オペラでも本物の火を使うことがよくありますが、別に消防車は待機していませんね。
このオペラ、特に有名な歌手やオーケストラが演奏したわけではないので、お安かったですよ。予約で2400円、当日券で3200円でした。普通のオペラは2万円位しますからね。 だから若い人が一杯でした。
Commented by AoimikanM at 2007-02-27 06:32
gyuさん、こんばんは。
これはオペラなのですね。ホントすごい、という言葉があいますね。
こういった新しいタイプの演劇はパリでのよくやりますが、
それをオペラと組み合わせているというのは珍しいのではないでしょうか。
バルセロナ、、、これを観るためにだけにいこうかな、と思いました。何時まで公演してますか?
いや、ホント、これは観てみたいです。
ご報告有り難うございました。

*れもん
Commented by gyuopera at 2007-02-27 15:36
♪*れもんさん、おはようございます。
これはLa Fura dels BausというグループがNaumonという船倉を舞台として上演しているのですが、過激な演出で有名なのだそうです。
こちらのメールアドレスで予約できますが、当日券でもOK. naumon@lafura.com
インフォメーションは
http://www.naumon.com/main.php?lang=1§ion=1&menu=1
また、FuraのHPは
http://www.lafura.com/entrada/index2.htm

ただ、音楽的に非常に質の高いものではありませんし、立って見るので、自分の周りはよく見えますが、聴衆の中を動き回るので、遠くにいる人は見えなかったりということがあります。
公演は2回増えて、3月8(女性のみ)、3月9日、3月10日です。
パリからわざわざ見に来るほどの価値があるかどうかはわからないですよ。確かに面白かったですけれどね。
Commented by sidoredo at 2007-06-07 01:01
はじめましてこんにちは。naumonで検索してここに着きました。
わたしのブログでgyuさんの記事を紹介していいですか?(naumonについての記事を書いたのですが、gyuさんの記事があると更にわかりやすいので…)
もしよければお返事ください*では!
Commented by gyuopera at 2007-06-07 01:44
♪sidoredoさんこんにちは。バルセロナにお住まいなのですね!あーてぃすとでいらっしゃるのね。
どうぞどうぞ!紹介してくだるのはわたしもうれしいです。
それにしても、naumonで検索してここに到達なされたんですねぇ。
後でsidoredoさんのブログも訪問させてくださいね。
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by gyuopera | 2007-02-26 03:08 | オペラ、コンサート musica | Comments(14)

私と一緒にバルセロナを散歩しましょう Vamos a pasear conmigo en Barcelona!


by gyuopera