2017年 03月 31日
サラゴサへ8 フィリップ・ジャルスキーのコンサート |
ホテルに帰ってゆっくりお風呂に入ってから着替えて、いよいよコンサートへ。
会場はホテルからすぐ近くのサラゴサAuditorio。
奥にチェンバロとオルガン、真ん中に背を高くしたチェンバロ。ということは、指揮者のファゾリスが指揮をしながら弾くのでしょう。
この日のコンサートは「オルフェオ」
Amanda Forsythe soprano
Philippe Jaroussky countertenor
Diego Fasolis director
I Barocchisti
前半は、17世紀の作曲家による3つのオルフェオのオペラ(L’Orfeo de Claudio Monteverdi, Orfeo de Luigi Rosi y L’Orfeo de Antonio Sartorio)より抜粋して、オペラが別の作曲家にも拘わらず、まるで一つのオペラのようにうまくつながって流れるように進み、最後に絶望したオルフェオの歌で終わります。その最後の “Possente spirto” の驚くほど繊細で美しいこと。
後半は、18世紀のグリュックのオペラ「オルフェオ」からで、一番最後に歌われたジャルスキーの “Che farò senza Euridice!” は、今まで聴いたことのあるこのアリアの中で、一番悲しく美しく感動的でした。
ジャルスキーは期待を裏切らぬ素晴らしいテクニックと、非常に繊細な部分や感情的な表現の豊かさで聴衆をオルフェオの世界にいざないます。彼の声を聴いていると、裏声という不自然さの感じられない、非常に美しい響きで、かつ声量もあり、ソプラノのアマンダさんも、この役にぴったり合った声・歌唱で、ジャルスキーとよく調和していました。
ファゾリス指揮の I Barocchistiも、きりっとした小気味の良い演奏で、歌手のピアニシモのパートを少しも妨げることなく、素晴らしいハーモニーでした。ファゾリスの指揮は見ていてとても面白いのです。拍を指示するのではなく、自由に動く手がまるで音を表現しているようで、またそれがとても分かりやすいのです。
前半に弾いたビオラ・ダ・ガンバが素晴らしかったし、後半のトラヴェルソ、リコーダーもとても良かったです。
また、コンサート形式とはいえ、前半と後半で歌手たちは衣装を替え、アマンダさんはグレーのドレス、ジャルスキーは初めは白シャツに蝶ネクタイとスモーキング、エウリディーチェが死ぬと、蝶ネクタイを外して出てきます。
後半はアマンダさんは真っ赤なドレス,ジャルスキーは黒シャツに襟が革のジャケットに黒い皮のパンツ。両脇に椅子が置いてあって、エウリディーチェが死んでしまうと、悲嘆にくれたオルフェオがうつぶせになるほどに座り込むのですが、前のコンサート(ドルトムンドやアムステルダム)ではもっと大きなソファ的な椅子だったのに、サラゴサでは普通の椅子だったので、しがみつくように斜めに座っていてきつそうでした。
感動的なコンサートのあと、モンテヴェルディの「ポッペアの戴冠」から、最後のデュエット、Por ti miro を歌ってくれました。指揮者のファゾリスさんが2人を促して、後ろの席の人のために半分を後ろを向いて歌ったんですよ。
ファゾリスさん、怖い顔しているかと思ったらこんなかわいいしぐさも(笑)。
コンサートの後は、サイン会があるとアナウンスがあり、行ってみるとみんな列などお構いなしにごちゃごちゃに待っています。秩序なんかまるでないので(バルセロナではみんなちゃんと列に並びますよ)、待っていたらあとから来た人もいつの間にか前になっていて、私は最後から二番目くらいになってしまいました。
やっと私の番になったら、せっかくCD持って行ったのに、開けたらディスクを家に忘れてきておりました。それで中に入っているブックレットにサインしてもらいました。
「一番前の席に座っていたでしょ?」
というんですよ。歌いながら、演技しながら、ちゃんと客席を見る余裕があるんですね。
お願いして写真を撮らせてもらいました。
夜11時を過ぎていましたが、思ったほど寒くなく、ホテルもすぐ近くでよかった。
コンサートの感激でなかなか寝付かれなかったのですが、やっと寝たと思ったら、4時ころでしょうか、上の人が、靴で部屋を歩き回っている音で目が覚めました。激しく響くので、とても眠れたものではありませんでしたが、それでもその後3時間くらい寝たみたい。
朝になってテレビのニュースを付けると、ロンドンのテロを報道していました。
ホテルからタクシーで駅まで行き、AVEに乗って帰りましたが、行きはPreferenteだったので27ユーロ(金額うろ覚え)でしたが、帰りは普通だったので、15.75ユーロ。安かった!マドリッドまでだと食事が付くけれど、近いところは別にPreferenteにする必要ないですね。座席も特に広くもないような気がしますから。
ヨーロッパ(海外生活・情報) ブログランキングへ
by gyuopera
| 2017-03-31 07:29
| オペラ、コンサート musica
|
Comments(2)
Commented
by
yokodak
at 2017-04-01 23:22
x
サラゴサは空軍基地があるところというイメージくらいしかありませんでしたが、歴史ある素敵な街なのですね。ブログを拝見してとても興味が湧きました。
オルフェオのコンサート、素晴らしかったのですね。いつも羨ましく読ませていただいています。コンサートは全てCDと同じ初期バロックの曲でまとめられていたのかと思いきや、後半はグリュックでしたか!バロック期におけるオペラ・アリアの前期から後期、レチタル・カンタンドからダ・カーポ・アリアへと発展して行く過程が堪能出来る良いプログラムですね。ジャルスキーの歌うセイチェント、大好きです。彼が歌うグリュックの“Che farò senza Euridice!” も聴いてみたい!そしてアンコールは”Por ti miro”。本当に羨ましいです…(溜息)。
オルフェオのコンサート、素晴らしかったのですね。いつも羨ましく読ませていただいています。コンサートは全てCDと同じ初期バロックの曲でまとめられていたのかと思いきや、後半はグリュックでしたか!バロック期におけるオペラ・アリアの前期から後期、レチタル・カンタンドからダ・カーポ・アリアへと発展して行く過程が堪能出来る良いプログラムですね。ジャルスキーの歌うセイチェント、大好きです。彼が歌うグリュックの“Che farò senza Euridice!” も聴いてみたい!そしてアンコールは”Por ti miro”。本当に羨ましいです…(溜息)。
0
Commented
by
gyuopera at 2017-04-02 16:02
♪yokodakさん、コメントありがとうございます。
サラゴサの町はとても気に入りました。バルセロナからも近いし、また来てくれたら絶対行きます。
コンサートはとても素晴らしくて、うまく構成してあるなと思いました。特に前半、CDと同じですが、本当に一つのオペラ化と思うほど違和感がなく流れて行って、うまくまとまっているので、これでコンサートは終わり、と思ったくらい(笑)。やっぱりCDで聞くのと生ですぐ近くで聞くのとは全然違って、このコンサートを聴けて良かったと思いました。グリュックのケ・ファロは実は好きではなかったのですが、PJが歌うと本当に感動的で、涙が出るほどでした。
日本にも行ってコンサートをしてほしいですが、日本のプロモーターって、どうなっているんでしょうね。
サラゴサの町はとても気に入りました。バルセロナからも近いし、また来てくれたら絶対行きます。
コンサートはとても素晴らしくて、うまく構成してあるなと思いました。特に前半、CDと同じですが、本当に一つのオペラ化と思うほど違和感がなく流れて行って、うまくまとまっているので、これでコンサートは終わり、と思ったくらい(笑)。やっぱりCDで聞くのと生ですぐ近くで聞くのとは全然違って、このコンサートを聴けて良かったと思いました。グリュックのケ・ファロは実は好きではなかったのですが、PJが歌うと本当に感動的で、涙が出るほどでした。
日本にも行ってコンサートをしてほしいですが、日本のプロモーターって、どうなっているんでしょうね。